【ミニバス練習】ラダートレーニング(ドリブルもシュートも行う総合ドリル)
今回は、ミニバスのチーム練習として行っている「ラダートレーニング」を紹介します。
バスケットボールに限らず、多くのスポーツで取り入れられているラダートレーニング。
私のチームでは、ドリブル、パス、シュートの要素も加えた、総合的なチーム練習として行っています。
このラダートレーニングは、運動神経を伸ばすのに最適なミニバス世代に非常にマッチした練習です。
具体的な練習方法、チーム練習としてドリル化するために工夫した点など詳しく紹介していきます。
概要
ラダートレーニングとは、地面に置いたハシゴ(ラダー:Ladder)の上を、決められたステップで走り抜ける練習です。
主に敏捷性(アジリティ)を鍛える練習として、バスケットボールに限らず、多くのスポーツで行われている有名なトレーニングです。
JBA公式テキストでも、コーディネーショントレーニングの章で紹介されていました。
早く正確に走り抜けることで俊敏性を鍛えることはもちろん、ボールの投上げ動作を同時に行うことで、複数のコーディネーション能力が鍛えられる練習とされていました。
コーディネーション能力については、過去の記事にて詳しく書いていますので、併せて参照ください。
私のチームでは、このラダートレーニングに、ドリブル、パス、シュートの要素も加えています。
俊敏性はもちろん、バスケットの基礎スキル、コーディネーション能力に至るまで鍛えられる総合的な練習を目指してメニュー化しています。
次項より具体的な手順を紹介していきます。
手順
体育館でチーム練習としてラダートレーニングを行う例を紹介します。
まずは、下図の内容をホワイトボードに書いて、行うことをルールをしっかりと認識合わせしてからスタートします。
図中の「ステップ」は、ラダーをどのようなステップで走り抜けるのか、足の動きを示しています。
図中の12パターンを基本パターンとし、練習時間に応じて減らしたり、新しいパターンを追加したり、その時々で変化させています。
「ドリブル」は、足の動きに加えて、同時にドリブルを行うことで、ドリブルやハンドリングスキル向上、複数のことを同時に行うカップリング能力向上を目的としています。
- ボール無しでステップだけに集中。
- ボール1個の実践に近いドリブル。
- ボール2個でハンドリングに負荷をかけたドリブル。
の3パターンの難易度を設定し、自分のレベルに合わせて選択させています。
ドリブルは、足のリズムに合わせたドリブルを行うことで、コーディネーション能力のリズム能力が向上します。
また、一番成果が目に見えるのが、複数のことを同時に行うカップリング能力です。
正確にラダーを走り抜けながら、2ボールドリブルも行うとなると難易度は大きく上がりますが、さすがゴールデンエイジ。何回か繰り返すことですぐにできるようになります。ボール2個を自由自在に扱いながらの複雑な足捌き。側から見ていて感動すら覚えます。(笑)
ラダーをバスケットゴールに向けて配置することで、ラダーを駆け抜けたあと、そのままシュート練習につなげることができます。
シュートの種類は、以下の3パターンです。
- そのままドリブルを続けてランニングシュート。
- ラダーを抜けたらあと両足でミートしてジャンプシュート。
- ボール2つの場合には、ボールを片方ずつ、マイカンドリルの要領でレイアップシュート。
更に、複数人が同じゴールにシュートする状況を敢えて作り、判断要素も加えています。
- ゴール下に誰もいなければランニングシュート。
- 誰かいればジャンプシュート。
というように、ラダーが終わった瞬間の状況で判断して行動する。
コーディネーション能力のリアクション能力も鍛えられます。
そして、パスの要素も加えることが可能です。
ステップの⑪と⑫の「投げ上げラン」
これは、ラダーを駆け抜けながら、上方にボールを投上げてキャッチを行います。
最適な位置でキャッチするために、絶妙な力加減で投げ上げる必要があり、これはコーディネーション能力のディファレンシング能力にあたります。
さらにキャッチするためには、ボールと自分の位置関係を司るオリエンテーション能力が必要です。
片足立ちを矯正するステップもあり、バランス能力も鍛えることが可能です。
JBAテキストによると、ラダートレーニングで効果が見込めるのは、コーディネーション能力の中でもバスケットで最重要となるアダプタビリティ能力とされています。
ここまでで全7種類のコーディネーション能力を網羅されています。
非常に多くの要素が詰まった良い練習メニューとなっています。
ステップ
ラダーをどう駆け抜けるのか?ステップの仕方について、図にまとめました。
図の見方は以下の通りです。
- Rと書かれた青丸は右足。
- Lと書かれた緑丸は左足。
- 丸の中の数字は何歩目か。半透明は繰り返しを示す。
- スタート地点にある0歩目付近のトンガリは、体の向きを示す。
1つの枠に対して片足ずつ。
ただ走るだけで簡単に見えますが、枠の中心を正確に捉えることが重要です。
正確にできたら、徐々にスピードを上げていきます。
1つの枠に2歩。クイックラン1に比べ、2倍足を動かす必要があります。
1歩目を左足でやったら、次の周では右足から。
左右の足で動きが異なるので、両方しっかりやります。
両足同時に枠内に着地します。
ラダートレーニング全てに言えることですが、素早く走り抜けるためには、かかとを少し浮かせて母趾球(ぼしきゅう)を使う意識が必要です。
この両足ジャンプで、かかとまでベタッと付く子が続出するので「忍者になれ!」と指導します。
グーパーのドリブルは、
- グーで1回、パーで1回と、足の動きと一緒にドリブルをつくパターン。
- グーでついて、パーでつかずにタメる。
の2パターンありますが、最終的には後者を目指します。
タメを付けられるように、強いドリブルを意識させることができます。
しかし、強いドリブルを習得する前にやってしまうとダブルドリブル癖が懸念されます。
まずは前者で強いドリブルを心がけさせます。
片足だちでドリブルを行うという状況を瞬間的に作ることができます。
コーディネーション能力のバランス能力にあたります。
片足ジャンプが2回となるため、ケンパより更にバランス能力が鍛えられ、足腰も鍛えられます。
小学生は全体的に足腰が弱い傾向あり、フットワークトレーニングでも片足に負荷がかかる練習を苦手とする子が多い印象です。
筋力を鍛えるのに適した年代はもう少し先(中学後半)なので仕方無い部分もありますが、このような練習を通して少しずつでも鍛えていくのが良いと思います。
体の軸をしっかり移動することを意識させる必要があります。
ラダーの縦方向のラインに自分のヘソを持ってくる意識です。
と言うのも、実際にやらせたところ見事に全員足だけ動かす状況となりました。
体をラダーの中心からずらさずに、片足ずる交互にラダーの外に出すような動き。
やってみると、こっちの方が楽なんですね。
正しい形でやると、体幹も使い、腹筋にも刺激を入れることができます。
本当は「ラテラル・ラン」という名前ですが、覚えにくいので「横走り」と命名してやっています。
一発で認識できる分かりやすい名前を付けることも、練習を効率良く行う上で重要だと思います。
足の動きが細かく複雑であり、ラダーやってる!と思えるステップです。
このステップで2ボールを自由自在に扱う姿は圧巻です。
こちらも足の動きが複雑であり、パラレルよりも子どもたちは習得に苦労していました。
そして、ドリブルは「2歩ごとに1回」と制約を付けると効果的です。
足の動きは3拍子、ドリブルは2拍子。
カップリング能力に大いに刺激が入ります。
ドリブルではなく、ボールを上に投上げるパスの要素が入ります。
ボール1個の場合には両手で、2個の場合には片手で投げ上げます。
キャッチする位置は、1回目はラダーの中間付近。
ラダーを駆け抜ける間に2回投上げを行います。
ちょうど良くキャッチできる力加減が必要で、ディファレンス能力が試されます。
キャッチするためにラダーから目を切る必要があるため、オリエンテーション能力も鍛えられます。
投げ上げラン自体が有名なコーディネーショントレーニングであり、多くの要素が詰め込まれた良い練習であると言えます。
投げ上げラン1よりも足が忙しくなり、更に負荷をかけることができます。
ドリブル/シュート
上で紹介したステップと同時にドリブルを行います。
ドリブルのパターンとしては、以下3つ用意しています。
- ボール無しステップのみ
- ボール1個
- ボール2個
ボール無しは、初めてチャレンジする場合など、足捌きだけを重点的に練習する場合に行います。
ドリブルを行うのは、ボール1個パターンと2個パターン。
ボール2個の難易度が高く、ドリブルスキル、ハンドリングスキルを大幅に高めることができます。
ただし、ボールを2個は試合ではあり得ない状況ですので、2個でやったら次のセットは1個と両方とも練習させるようにしています。
シュートは、以下のパターンで行っています。
- ランニングシュート
- ジャンプシュート
- マイカンドリル
ランニングシュート、ジャンプシュートは、1つのゴールを複数人で使う場合、瞬時に判断させるようにしています。
ジャンプシュートの場合には、ラダーを終えたあとしっかり両足でミートさせます。
ミートしたあとで「ゴールが空いてる!ランニングシュート行けた!」という判断ミスが多々あります。
ラダーを駆け抜けながらもゴール付近を視野に入れておく必要があります。
小学生には難易度が高めですが、練習を繰り返すことでできるようになります。
マイカンドリルとは、ボールを2個両手に持った状態から、片手ずつ交互にレイアップシュートを行う練習です。
検索すればたくさん出てくる有名な練習です。
ボール2個のドリブルのあとは、このシュートを2回行うという決まりにしています。
ここで「シュートしたボールは床に落とさない」を徹底させています。
片手で打って片手でキャッチ。ハンドリングが鍛えられます。
そして何より、最後まで気を抜けないため、集中力も鍛えることができます。
コートの使い方
ラダートレーニングをチーム練習として行う場合のコートの使い方の例を紹介します。
学校の部活動となると、体育館割り当ての制約がありますので、いつも同じ環境で練習できるとは限りませんよね。
そのため、コートの使い方にもパターンを3つほど設けて行っています。
1つのゴールにラダー1つ
コートが2面ある小学校の体育館を例とします。
2面のうち1面をオールコートで使える場合、上図のように各ゴールにラダー1つずつ配置して行います。
この配置だと、誰にも邪魔されずにシュートを1人ずつ打つことができます。
シュートまでしっかり練習させたい場合に適しています。
デメリットとして、同時に練習できるのは最大でも4人ほど。
上図のように、10人で行ったとすると、半分以上が待ち状態となってしまいます。
時間的な効率はあまり良くないのが欠点です。
しかし、まだ練習に慣れていない子どもがいる場合には、前の人の練習を見てイメージすることができます。
1つのゴールにラダー2つ
体育館の4分の1、ハーフコート1つ分しか使えない場合です。
私の学校は、現在週2回ほどあります。
ゴールは1つですが、効率をあげるために、ラダーを2つ配置して2方向から同時に行います。
ラダー3つだと密集しすぎ。2つが限度だと思います。
複数人が1つのゴールにシュートするという状況となりますので、ここに判断の要素も加えています。
ゴール下が空いているなら、ランニングシュートを行います。
ランニングシュートに行っている人がいれば、その場でジャンプストップしてジャンプシュートを行います。
一番良いのは、ラダーを見ながら、ゴールも見ながら、広い視野で動くこと。
そうしなければ、ラダーが終わってから、瞬時に判断しなければならなくなってしまい、次の動作に遅れが出てしまいます。
実際の試合に生かせる判断要素も鍛えることが可能です。
1つのゴールにラダー3つ
1面オールコートが使える場合でも、ゴール2つ使うのでは無く、中央にあるゴール1つを使う場合もあります。
この場合には、広いスペースを有効活用してラダーを3つ使います。
ラダーが3つあると、待ち時間が短くなり効率は大きく向上します。
同時にシュートに行く人数も増えるため、先ほど書いた判断要素がより鍛えられます。
更に効率を上げるため、練習全体に制限時間を設け、タイマーをセットします。
そして、全ての種目を終えられなかったとしても、時間で終わりと宣言します。
待ちがほぼ無く、自分のペースでできるとなると、自然に競争が生まれ、結果的に全体的に早く練習が終わります。
しかし、急ぐあまり練習が雑にならないよう注意が必要です。
自主性も育つ
チーム練習としてのラダートレーニングを紹介してきました。
ラダートレーニング特有の敏捷性向上はもちろんですが、ドリブル、パス、シュート、ハンドリングといったバスケットのスキルも同時に鍛えられる良い練習になったと思います。
そして、各種コーディネーション能力の向上、視野を広げたり、集中力も鍛えられるなど、他にも多くの要素が詰まっています。
更にもう一つ、このラダートレーニングを通じて、子どもたちの自主性も育てることができると考えています。
今まで紹介してきた練習内容は、初めから全てを提示した訳ではありませんでした。
半ば小出しの状態で、段階的に改善していったという感じ。
「効率悪いところは?改善するためにどうすれば良いだろう?」と、子どもたちに尋ねてみるのです。
良い答えが出て来なかったとしても、一回考えさせてみることが重要です。
頑張って考えて何かしら発言しようとする子、考えてはいるようだが全く発言しない子、何も考えてもいない様子の子、バスケに直結しない部分も観察することができます。
最終的に用意した答えに誘導することになったとしても、改善した練習メニューはチーム全員で決めたことになります。
コーチにただやらされているよりは、モチベーションが違うはずです。
また、このラダートレーニングの良いところとして、成果が見えやすいこともあります。
ステップで失敗すればすぐ分かりますし、ドリブルもミスるとボールがどこかに飛んでいってしまいます。
成功と失敗がはっきりしているのです。
そのため、失敗すれば悔しいし、次は成功できるように頑張ります。
しかも、さすがゴールデンエイジ。
運動神経を伸ばすこの手の練習は得意です。やる度にどんどん上達していきます。
子どもたち本人にとっても、成功、失敗という形で上達が分かりやすいので、意欲的に取り組んでくれます。
おわりに
本記事では、チーム練習としてのラダートレーニングについて、実際の経験をもとに紹介しました。
どこかのチームのお役に立てたらうれしいです。
最後までお読み頂きありがとうございました。