【スキル体系】コーディネーション能力

2022-03-31スキル体系コーチ, コーディネーション, スキル体系, ミニバス

コーディネーション能力とは、バスケットボール指導教本によると「神経回路の働きによって運動を調節する能力」と説明されています。
分かり易い言葉で言い換えると「自分の身体をイメージ通りに動かすために必要な能力」のことです。

足の速さ、ジャンプ力、持久力といった「身体能力」とは別に、バランス感覚やリズム感といった能力を「コーディネーション能力」という名前で区別しています。
俗に言う「運動神経」と呼ばれていたもので、自身の身体をうまく使い、状況に対応する能力です。
バスケットボールでは、コーディネーション能力を伸ばすことで、パス、ドリブル、シュートといった基本技術を試合で最大限に発揮できるようになります。
そして、新しい技術習得が早くなる。怪我を回避する能力が上がる。という効果も期待できます。

日本は、世界に比べて高校生以降の伸びが少なく、状況変化に対応する能力が低いという課題があったとのことです。
その原因として考えられるのは、若い世代からチームの勝ちを優先してしまっていたこと。
そのため、バスケット技術の出来栄えや、チーム内における役割というものが重要視され過ぎてしまっていました。
育成年代のうちにコーディネーション能力を高めることこそが、この課題を解決する手段であるということで、近年JBAを中心として盛んに取り上げられるようになりました。

コーディネーション能力を伸ばすことに適しているのは 9〜12歳。ゴールデンエイジと呼ばれている年代です。
神経系の発達が顕著な年代であり、動きを早くスムーズに取得することが可能です。
自転車に例えると分かり易いと思います。
大人になってからよりも、子供の頃の方が早く自転車に乗れるようになるのは、これが理由です。
そして、一度習得したコーディネーション能力は一生維持されるもの。
何歳になっても自転車の乗り方はなかなか忘れません。

アンダーカテゴリの男子日本代表ヘッドコーチも務めた トーステン・ロイブル氏 がJBA公式テキストDVDで話していた言葉が印象的でした。
「コーディネーション能力を一生持ち続けられるということは、コーチから選手への大きな贈り物となります。」
ゴールデンエイジの子どもたちを受け持つミニバスコーチは責任重大ですね。

スキル体系図

解説

公益財団法人 日本バスケットボール協会 編「バスケットボール指導教本 改訂版 [上巻]」大修館書店, 2014年8月
によると、7つのコーディネーション能力は、互いに密接に影響し合うものとされています。
バスケットボールの動作は全て、複数のコーディネーション能力が元になっています。

鈴木 良和 (株式会社ERUTLUC)著「バスケットボールの教科書1 技術を再定義する」ベースボール・マガジン社, 2016年11月
では、7つのコーディネーション能力を、アダプタビリティ(変換能力)頂点にしたピラミッド型として定義されています。
バスケットボールの試合において、一番重要となるコーディネーション能力はアダプタビリティ。
目まぐるしく変化するバスケットボールという競技に対応するために重要となる能力です。
私もこの定義に基づいて普段練習メニューを考えていますので、本ブログでもこのピラミッド型でスキル要素を定義します。

 バランス

全ての運動の基礎となる、身体のバランスを保つ能力。
身体の姿勢や重心を安定させる能力。
バランスが崩れたとしてもプレイを続けることができる能力。
バスケットボールは激しい身体接触が伴うが、簡単にバランスを崩さないような身体づくりが重要となる。

 リアクション(反応)

パスキャッチや、相手の動きに合わせたディフェンスの動きなど、何かに素早く反応する能力。
合図に応じて単純に動きを変化させる「単純反応」と、合図に応じて3つ以上から1つの動作を選択して実行する「選択反応」がある。
バスケットボールは8割ほどが視覚からの情報で動くこととなるので、視覚情報に基づいて反応する能力を鍛える必要がある。

 リズム

流れに沿う、変える、反して動く能力。
イメージした通りのタイミングで動作する能力。
一定のリズムを刻むドリブル。
裏拍を使ってリズムに変化を加える。
相手のリズムに合わせることで、動きを予測。
相手のシュートタイミングに合わせてブロック。

 オリエンテーション(定位)

位置関係を把握する能力。
速度、時間、距離など時空の感覚が必要。
走りながらパスをキャッチして、そのままランニングシュート。
ゴールに向かって走っている味方へシュートしやすいパスを出す。

 ディファレンシング(識別)

力の強弱や変化をつける能力。
定位能力で得た情報を元に、適切な力加減で動作を行うための能力。
オリエンテーションとディファレンシングは密接に関係している。
味方選手との距離に応じて、取りやすいパスを出す。

 カップリング(連結)

複数の技術や動作を同時に行う能力。
ディフェンスからボールを守りながらドリブルをする。
ドリブルとステップのタイミングをずらす。
ミニバスを指導していて、声を出しながら動作、周りを見ながら動作もカップリング動作だと考える。
バスケットボールの全ての技術にカップリングが求められる。

 アダプタビリティ(変換)

相手の動きなど状況に合わせて、素早く自分の動作を変化させる能力。
1on1でドリブルとしているとき、コースを止められたので瞬時にかわす。
レイアップシュート中にブロックされそうになったので空中で咄嗟にダブルクラッチ。
バスケットボールの試合の状況は常に変化し続ける。
あらゆる変化に対応するための能力がアダプタビリティ。
バスケットボールにとって最も重要なコーディネーション能力。

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スキル体系図の見方

参考文献