【スキル体系】サイドラインブレイク(側線速攻)
トランジションとは、コンバージョン(攻守切替)が発生してから、攻撃側がゴール付近までボールを移動させる過程のことでした。
この時のオフェンスをトランジションオフェンスと呼びます。
トランジションオフェンスの中で、相手のディフェンスが整わないうちに攻撃することをファストブレイクと呼びます。
ワンパス速攻もファストブレイクの一種となります。
この記事では、複数人の選手で組織的に攻めるファストブレイクの中でも、サイドレーン付近を使ってボール運びを行う「サイドラインブレイク(側線速攻)」について取り上げます。
スキル体系図
解説
サイドレーンを使った速攻
下図の通り、制限区域の幅(4.9m)でゴール間を結ぶレーンをミドルレーン、その右側を「右サイドレーン」、左側を「左サイドレーン」と呼びます。
下図は、前回記事で紹介した「ミドルレーンを使った速攻」の解説で用いたものです。
これに対して、サイドレーンだけを使った「サイドラインアウトブレイク」という速攻があるらしい。
正直、今回勉強するまで知りませんでした。
JBA指導教本の下巻に、以下の記述がありました。
通常は、ミドルレーンでボールを運んだほうが、左右どちら側にも攻撃がしかけられるため有利とされているが、相手チームがフルコートのプレスディフェンスをしかけてきた場合は、ミドルレーンでボールを運ぶよりも、一方のサイドレーンの中で縦にボールをつないだ方がほうが安全に早くボールを運べることがある。
公益財団法人 日本バスケットボール協会 編「バスケットボール指導教本 改訂版 [下巻]」大修館書店, 2016年9月
今までは、サイドレーン側は、ボール運びの際にはなるべく避けるように指示していました。
サイドラインに追い詰められる危険性があるためです。
ラインから出てしまうと相手ボールになってしまいますので、サイドライン君というディフェンスがもう1人いるのと一緒。
プレスを仕掛ける場合にも、ライン側に追い込むのが基本になると思います。
そのサイドラインを敢えて速攻で使うとは。
指導教本には、用語の紹介程度で、そこまで詳しくは載っていませんでした。
しかし、「バスケットボールの教科書2 戦術と戦略の核心」に詳しく載っていました。
章の見出しは、「ファンダメンタルの向上と速攻の両立サイドラインブレイク」。
なんと、ファンダメンタル向上にも役立つらしい!
サイドラインに沿ってタイミングよく次々に選手が入って、ボールを縦につないでいくのをサイドラインブレイクと言います。
私は速攻とファンダメンタルの両面の向上でサイドラインブレイクが効果的だと考えています。
理由は、パスの距離が短く一定なため、腕力の足りない小・中学生でも速攻の形を作りやすいから。
もう一つの理由に、考えながら走る習慣 を作れることも挙げられます。鈴木 良和 (株式会社ERUTLUC)著「バスケットボールの教科書2 戦術と戦略の核心」ベースボール・マガジン社, 2016年12月
軽く衝撃でした。
確かに、ミドルレーンを使った速攻で有名な3メンは、パスの距離が少々長くなってしまいます。
練習としてはとても良いのですが、小学生が実践で使えるかは少々疑問でした。
実際、試合の場面で3線速攻を見たことはほぼありません。
これに対して、サイドレーンを使うことで、 パスの距離が一定 になるとのこと。
小学生には確かにいいですね。
更に、「 考えながら走る習慣 を作ることができる」
これは素晴らしい!
サイドラインブレイク
サイドラインブレイクとは、どのような速攻なのでしょうか?
図をみてみましょう。
ディフェンスリバウンドは通常ゴール付近で取ることになります。
リバウンドボール獲得直後は、ゴール付近に味方も相手も選手が密集している状態となります。
そのため、サイドライン側に「アウトレットパス」を出し、速攻がスタートします。
アウトレットパスのあと、2つ目のパスをミドルレーンの味方に出し、ボールを運んでいくのがミドルレーンを使った速攻。
これに対して、サイドレーン側に2人目、3人目の選手が走り込み、縦にボールをつないでいくのが、 サイドラインブレイクです。
ボールの流れが一直線になるように、選手たちが動きます。
オフェンスに切り替わった時点の自分とボールの位置関係により、選手全員が 臨機応変な動きが必要となり、常に 考えながら走る習慣 をつけることができます。
「考える習慣」というのが、育成年代にとって非常に効果的な戦術だと思いました。
攻守が切り替わったあと、ディフェンスは通常ミドルレーンを通ってゴールまで戻ります。
そのため、サイドレーンは人口密度が低く、ボールを運びやすいエリアなので、安全にボール運びができるというメリットもあります。
デメリットとしては、速攻の破壊力では3線速攻には敵わないとのことです。
どんなに素早くボールをつないだとしても、パスの回数が増える分、ディフェンスが数人戻っている状態となります。
1対0といったワンマン速攻や、ディフェンス1人だけといった有利な状況にはなりにくいとのことでした。
だからこそ、育成年代はサイドラインブレイクをやる意味はあるとのことでした。
アウトレットパス後、相手のセーフティの位置によっては、ミドルレーンに走る味方にパスすることもできる。( ノーマークの判断)
セーフティが遅れているのならば、型通りにサイドレーンを運ぶだけでなく、ワンパス速攻に切り替えることもできる。
考えて走る習慣が身に付くことで、 臨機応変に攻撃をしかけるバスケIQが鍛えられるということだと理解しました。