【ミニバス指導】練習計画 – 選手に学んでほしい項目の列挙
前回の記事で、練習計画を立てるための手順について、学習した内容を図にまとめ理解を深めました。
練習計画を立てるための1つ目の手順「選手に学んでほしい項目の列挙」を実践してみると、新たな疑問が湧いて来ました。
それは、どれくらいの粒度(細かさ)で列挙していけばいいのか?
今回は、これについて考えてみたいと思います。
はじめに
練習計画の立て方に関して、以下2つの記事を紹介しました。
【ミニバス指導】練習計画の大切さ
【ミニバス指導】練習計画を立てるための手順
バスケットボール指導教本などの書籍で学んだ、練習計画の大切さ、練習計画を立てるための手順を、自分なりに1枚の図にまとめることで理解を深めることができました。
今回は、下図の赤点線で囲んだ箇所、「選手に学んでほしい項目の列挙」について考えていきます。
どれぐらいの粒度で列挙すれば良い?
前回の記事 【ミニバス指導】練習計画を立てるための手順 で、新たに湧いた疑問。
それは、「どれくらいの粒度(細かさ)で列挙していけばいいのか?」でした。
選手に学んでほしい項目は、ちょっと考えただけでも、どんどん出てきそうに思えます。
それらを全部列挙して、優先度付けて、練習ドリルに落とし込んで、マイルストーンを決めて取り組んで、選手やチームの状態もちゃんと把握して、時には練習計画を見直ししたり、練習の難易度調整したり。
こんな感じでやっていけば、きっとチームは強くなるはず!
よし、どんどん列挙しまくろう!
バスケットボール指導教本の例
列挙するにあたって、自身の経験だけでは不十分なので、書籍や動画教材、インターネット、他コーチからのアドバイスなど、広く情報収集する必要があるとのことでした。
確かに、どんな感じで挙げたら良いかイメージを掴むため、バスケットボール指導教本に載っている例を見てみようと思います。
1行目、チームオフェンスの項目として「リバウンドからファストブレイク」とありました。
ちょうど私のチームでも特徴にしたいと考えていた項目。
間違いなく優先度は「M: Must」になるはず。
他にもバスケットのスキルだけでなく、人間性、精神面に関わる項目もありますね。
いや、ちょっと待って。こんなざっくりで良いの?
「リバウンドからのファストブレイク」って、「リバウンド」と「ファストブレイク」って2個入ってるし。
私も「リバウンドからファストブレイク」については、ドリルを作って一連の流れを練習させてましたが、それは最後の大会に近い時期のことでした。
「リバウンドからファストブレイク」ができるようになるために、まずはリバウンド。
そして、リバウンドを取るためには、ボックスアウト。
マークマンを捕らえるヒット、体を使って締め出すブロックアウト。
ボールの飛んだ位置を瞬時に判断する能力。
ジャンプして空中でキャッチ。
キャッチした後のボールキープの姿勢。
リバウンドを取ったら味方にパス。または自分でドリブル。
リバウンドに絡まない選手は、チームの決まりに沿ったラインを走る。
ゴールまで行けたら最高速度のドリブルからのレイアップシュート。
などなど。
「リバウンドからファストブレイク」に至るまでに、習得してほしい項目が大量にあります。
もしかして、指導教本に書いている例は、中学とか高校とかもっと上の年代の話なのでは?とも思えてきました。
リバウンドを習得するまでの細かい基礎スキルは既に習得済みという前提で。
私のようなミニバスコーチでも、最終的には「リバウンドからファストブレイク」を習得して欲しい。
でも、その前段階として「リバウンド」を習得して欲しい。
更にその前段階の「リバウンドジャンプ」とか「キャッチ後の姿勢」とか超基礎的なスキルも。
習得して欲しいことは大小いっぱいある。それをどこまで列挙すれば良いのだろう?
これが疑問でした。
習熟度別指導内容
JBAのホームページに、「習熟度別指導内容」というものが公開されています。
男女プレーヤーが16歳頃までに習得すべき、基本技術からプレー戦術の基礎までの内容が掲載されています。
JBAホームページ – 習熟度別指導内容
指導者の方に是非とも知って頂きたい考え方・内容となります。
これを見ると、
①フットワーク・ボディコントロール ②ショット ③ドリブル など、全14個のグループに分かれています。
⑧リバウンドの項目もありました。
リバウンドの中身を見てみると、
R1 リバウンドの考え方とメンタリディ
R2 リバウンド – 両手キャッチ
R3 リバウンド – 片手キャッチ
R4 ボックスアウト・ヒットファースト
…
R22 トランジションリバウンドに飛び込む
R23 何人入るべきかの戦略: 行くか行かないかの判断
全23項目のスキルに分かれています。
リバウンドの考え方から、キャッチといった基礎的なこと、そして戦略に至るまで。
解説動画のYouTubeリンクが貼られていたり、JBAで出しているDVDテキストの参照先が書かれていたり、技術解説や練習方法を参照できるものもあります。
解説の参照先が載っておらず、スキル名称だけ分かるものも多くありますが、育成年代で習得すべきスキルがしっかり洗い出されて分類されていること。
練習計画を立てるにあたって貴重な情報であると思いました。
更に、DVDテキストには、これらの1つ1つのスキル動画解説に、習得に適した年齢が定義されています。
習熟度別指導内容と合わせて参考にすることで、ミニバスの年代で習得すべきスキルが、ある程度抽出できそうです。
「16歳までに習得すべき技術とプレー戦術の基礎」とJBAが公開している情報ですので、これを列挙する粒度の目安として利用する他無いと思いました。
これで列挙する粒度に関する疑問は解決したかに思えました。
しかし、まだ半分しか解決していません。
粒度の違う要素をどう具体化していくのか?
指導教本に載っていた例、「リバウンドからファストブレイク」は、習得すべきスキルが多く含まれていることをお話ししました。
更に他の例を挙げると、U12ブロック育成センターの資料に、ドリブルの項目として以下のコンセプトが記載されていました。
「プレッシャーの強いディフェンスに対して、自滅(ファンブル)しない技術を身につける」
「ディフェンスに対して常に攻めの姿勢を保てるように技術を磨く」
これらはどれも、リバウンド、ファストブレイク、ドリブルなど、スキルの大きな括りについて述べているもの。
粒度が大きいと言えると思います。
それとは逆に、習熟度別指導内容に掲載されているスキル群。
これも同様に習得すべき項目ではありますが、スキル要素をより細かく分割したスキルです。
粒度が小さいと言えると思います。
これら粒度の異なる項目をどう扱っていくべきか?
これがもう半分の疑問となります。
バカチョンに洗い出して計画に割り当てていった場合、具体的なドリル化の段階で、重複する練習があったりと無駄な時間を使ってしまう可能性があります。
また、スローガンに対して、必要なスキル項目をカバーできているかの検証も難しいかもしれません。
そこで思いついたのが、「項目を分解して関連を定義すること」
リバウンドであれば、ボックスアウト、キャッチ、ジャンプ、ボールキープなど、洗い出したあとに細かなスキル要素に分解していきます。
粒度の大きい「リバウンド」
粒度の小さい「両手キャッチ」
何も考えずに、ひたすら項目を列挙していく。
「リバウンド」の項目を分解して「両手キャッチ」が出て来たら、重複しているので1つとして扱えば良いだけ。
逆に、項目を分解していく過程で、新たに必要なスキル項目が見えてくることもあるかと思います。
練習計画を立てる手順の図に、以下の赤点線部分の「項目を分解して関連を定義」を加えます。
おわりに
コーチとしてやってきて感じていた違和感はこれだったのかもしれません。
チームのスローガンを達成するために、必要な練習ができているか?
定量的に評価することが難しいと感じていたからです。
スローガンをスキル要素に分解して関連付けることで、練習がどこまでカバーできているか視覚的に評価できますし、足りない練習を補うことができると思います。
これで、うまくいきそうな気がしてきました。
次回は、追加した手順「項目を分解して関連を定義」について、実践を通じて詳しく見て行きたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
それではまた!